佐々木家具造形研究所 佐々木啓輔 神奈川

sasaki 5
sasaki 1

国境や文化、宗教を超えて共存できる家具

VOICEの香内斉が、自身と深く繋がりを持ち、尊敬するにフォーカスを当てる「JOURNAL」。第5弾となる今回は2020年に自身の工房を構え、初の個展をVOICEで迎える佐々木家具造形研究所の佐々木啓輔(けいすけ)さん。初見で細部の美しさのこだわりに一瞬でファンになった香内。その強いこだわりの源を伺いました。

text/photo:Yusuke TANIYAMA

  • sasaki 2
  • sasaki 13
  • sasaki 3
  • sasaki 4
  • sasaki 6
  • sasaki 17

自分の手で完結出来るもの

 工房がある横浜市青葉区寺家町(じけちょう)は、都内から車で30比較的アクセスの良い場所にありながら、ホタルが生息する美しい水源と田園風景に囲まれた自然豊かな町である。

 木工、陶芸、絵画、版画などのアトリエ、ギャラリーが点在し、モノづくりの人が集うエリアとしても知られている。そのため、工房の空きが出る事は稀だが、幸運にもこの場所が見つかった。「建物の天井や床はボロボロで相当な手直しが必要でした。内装に掛けるお金があまり無かったのですが、時間はたっぷりあったので自分で好きなように改装しようと思いました。」

 もともと建築家を志していた佐々木さんは大学で建築を学んだ。その経験を活かし、一種、課題をこなすような感覚で改装に取り組んでいったという

 建築家を志した彼がなぜ家具の道へ進んだのか。「建築というのは場所に依存するもので、当然その場所に建ててしまうと移動が出来ず、建築を見るためにはその場に訪れる必要があります。また、設計図を書いた後は大工さんが作るために自分の手から離れてしまいます。一方で家具は、容易に国境を超え誰かに届ける事が出来るし、設計から製作まで自分の手で完結出来るのがとても魅力的に思えました。」

  • sasaki 10
  • sasaki 12
  • sasaki 7
  • sasaki 16
  • sasaki 21

デザインアプローチの構築

 大学卒業後家具製作を学ぶために品川の職業訓練校に入学。「木の基礎知識から、ノコギリや鉋(かんな)などの手加工、機械加工と一連の家具製作について学びました。知れば知るほど家具製作の奥深さに魅了され、この時に、家具の道に進もうと決意しました。」

 卒業後は、岐阜県にある家具工房 RITON(リトン)に入社。親方の大西鉄平さんは、長野県にある上松技術専門校を卒業後、独立3年目を迎えた頃だった。「材料選びや設計はもちろん、外注する事の多い旋盤加工や鉄フレームの製作、家具にまつわる作業を一貫して行っており、大西さんの元で学びたいと思いました。」

 入社後は、ひたすら家具と向き合う日々日常の仕事の中で技術を磨き、同時に自分の作りたい家具を模索し続けた。「デザインの核となるものが欲しくて家具・建築についてはもちろん、絵画や彫刻などの分野においても知識を深めるため沢山の書籍を読み、美術館を巡りました。」

 時間を費やし、5年目にしてようやく納得のいく1台のテーブルを完成させた。テーブルを見た大西さんは一言「これは高く売れよ」と。「一言だけだったけれど、自分にとっての1番の褒め言葉で、方向性が定まった瞬間でした。」その後個人的なオーダーも少しずつ増え始め、仕事終わりや休日に自分の家具を作るというサイクルを2年半続け、2019年に独立を決意する。

 リトン退職後今後のデザインの方向性をもう一度考察したいと思い、2ヶ月の時間をかけて海外を回った。「ヨーロッパ12カ国を周遊し、北アフリカ2カ国、トルコ、インド、メキシコと様々な場所に行きました。建築や絵画に触れ、それぞれの国の文化や宗教性を体感する事が出来ました。どこの国に持って行っても似合う多国籍かつ多様性を纏う家具が理想で、その核となるものをこの旅で自分なりに解釈し、理解を深める事が出来ました。」

  • sasaki 22
  • sasaki 19
  • sasaki 20
  • sasaki 23
  • sasaki 9

意味を生み出すもの

 佐々木さんの製作するものには材料や手法に強いこだわりを感じる。「材料は楢(なら)の柾目(まさめ)材を使用する事が多いです。反りや狂いが少ないため扱いやすく、木目があっさりしているのが特徴です。家具に陰影を出す為に彫り込みを入れる事が多く、主張し過ぎない材料でバランスを取るようにしています。」さらに、木の質量も重要な要素と彼は続ける。「扉や引出しを開ける際に木そのものの質量を感じられると重厚感や素材感が伝わります。それは木製家具である意味や使用する心地良さに繋がると考えており、程良い質量が出せるように意識しています。最終行程の表面仕上げは、素材本来の色や質感を活かせる石鹸仕上げを用います。滑らかな肌触りとほのかに残る石鹸の優しい香りと楢本来の香りが魅力です。」

sasaki 15
sasaki 8

 最後に、今後の展望について聞いた。

 「独立して1年、新しい家具のアイデアを出し続けて具現化する事が大切だと思っています。正直なところ、自分がこれからどうなっていくのかはあまり考えていません。沢山の方と出会い、色々なモノや考えを共有していきたいです。そのためには、とにかく続けていけるように頑張らないとですね。」

 家具は良くも悪くもそれ1つで空間の印象をガラリと変える事できる。佐々木さんの目指す 『 国境や文化、宗教を超えて共存できる家具 』 というのは、答えのない壮大なテーマだが、日々技術の向上と既成概念に囚われない多方面からのアプローチリサーチ(造形研究)をし続ける佐々木さんであれば何か答えを導き出してくれるのではないかと期待してしまう。

 

 

SASAKI RESEARCH INSTITUTE 
2021 COLLECTION
日程 : 2021年3月27日〜4月4日(3/30火曜は定休日)
場所 : VOICE (東京都渋谷区神宮前3-7-11)